2013年4月30日火曜日

2000年代は若冲。


講師で通っているデザイン系高校でたまたま空き時間ができてしまったので、ひさしぶりに図書館へ。
新刊紹介の棚に嬉しい本が並んでいるのを発見。
小学館の創業90周年記念企画「日本美術全集」の第1回配本の「法隆寺と奈良の寺院」と第2回配本「若冲・応挙、みやこの奇想」
一度中身をしっかり見てみたいと思ってはいたものの、こうした豪華本はなかなか見ることができない本なので本当に嬉しいです。

まずは、ちょうど東北復興企画で日本に来ている「プライスコレクション」の話題で印象深い「若冲〜」から。
さすがに小学館の創業90周年記念企画の発刊本だけあってとても丁寧な作り。
絵の発色も緻密な筆使いのタッチも申し分なく再現されていて見入ってしまいました。
屏風絵など大きな作品の全体図はもう少し大きくみせて欲しいという気がしましたが、満足な1冊。やはり画集はこのレベルの印刷でないと見られないです。
「法隆寺〜」の方も今度時間を作ってじっくり時間をかけてみたいですね。
この2巻が入ったということは全刊揃える計画なのでしょうか。とても楽しみです。

CMでは、プライスコレクションの作品が紹介されていますが、2008年に存在が知られたばかりの「象と鯨図屏風」が良いです。



この作品は北陸の旧家に伝わっていたものだそうで、現在は滋賀のMIHO MUSEUMが所蔵しているようです。
技巧家で知られる若冲の晩年の作品ですが、これまでのイメージとは異なり全体に優しい印象の中にも若冲独特の動物の造形と大胆な力のある構図が魅力的。ぜひ現物を見たいですね。



若冲が来てくれました
プライスコレクション江戸絵画の美と生命
仙台市博物館(3/1-5/6)
岩手県立美術館(5/18-7/15)
福島県立美術館(7/27-9/23)

2013年4月29日月曜日

ついに来た。


いつか手に入れたいと思いながら、中々きっかけがなく伸び伸びになっているもののひとつにittara(イッタラ)のバードコレクションがあります。

フィンランドのグラス作家であるOiva Toikka(オイヴァ・トイッカ)氏の作。

今年の冬にサントリー美術館で開催されていた「森と湖の国 フィンランド・デザイン」でもたくさんのバードが展示されていたのを見て、欲しい熱が再燃し、やっと落ち着きはじめたところ、ittaraのSAILにたまたま遭遇してしまいました。
これはもう運命です。

バードコレクションは毎年新作も作られますが、定番シリーズの「ヨタカ」。
ボテッとしたフォルムとシャープなラインがとてもモダンでかわいい。色のグラデーションも上品です。
さっそく北欧デザインの飾り戸棚の上に鎮座。
もともとそこにいたかのようにマッチしています。

2013年4月28日日曜日

ちょっといいニュース。

WWFの2013年の調査で、アムールヒョウの生息数が5年前の1.5倍になったというニュースがありました。

アムールヒョウはロシアの極東地域の森林に生息するヒョウの亜種ですが、森林の伐採で生息地が激減し絶滅の危機にあります。
保護区である「ヒョウの森」国立公園が拡大され保全活動が望ましい方向へ進んでいるということなので、なんとも喜ばしいニュースです。

ちょうどGWの時期ですから、自然環境のことを考えるために動物園に行くのもいいですね。
日本国内でアムールヒョウの飼育がされているのは以下の通り。関東ではズーラシアだけでした。

旭川市旭山動物園
福山市立動物園
神戸市立王子動物園
広島市安佐動物公園
よこはま動物園ズーラシア

2013年4月27日土曜日

用具への憧れ

デザインや美術の実習で用いる用具
できるだけ良質のものを揃えて渡したいというのは、どこの学校の先生も同じ気持ちだと思いますが、価格的な負担が大きくなりすぎない様に、実習内容や使用頻度、専門性などなどから判断するので、どうしても廉価版になってしまうものも。

用具の中でも価格帯の幅が広いのが「」。
アクリルガッシュなどを用いてデザインの構成を行なう筆ではなく。スケッチや建築パースに使う透明水彩絵の具の筆は、できればナイロンなどではなく、弾力や絵の具の含み、毛先の揃いなどからも動物の毛を使ったものにしたいですね。

自分もそうでしたが、「使ってみたい」という憧れから自分で選んだ用具はとても大事に使いますし、使っていてとても嬉しいものです。

最高級の部類に入るコリンスキーセーブル筆。
イギリスの名門ROWNEY(ラウニー)社のものです。
中学の時の美術部の先生が持っていたのを見せてもらってから憧れ、美大時代に買いました。最近使っていなかったので今年は授業で使おうかと思ってます。





2013年4月26日金曜日

新しい授業で

今年度からデザイン系高校の新しい科目を担当することになりました。高校1年生です。
4月は新しい用具を配布して一つ一つ説明。
自分の道具として使えるようになるようにはじめは細かいことまでしっかり伝えます。

はじめの制作はアクリルガッシュを使うので絵の具についてちょっとだけ脱線講義。

絵の具は簡単に言ってしまうと色の粉(顔料)で、これを紙などに定着させるために糊を使うわけで、この糊が油性だったり水性だったりするということ。
近代以降に顔料と糊が混ざったチューブ入りの絵の具が開発される以前は、画家が自分で粉と糊を混ぜていたわけで、けっこう知らない学生さんが多いです。

自分で粉と糊を調合して絵の具をつくる作業は、今でも日本画などの世界では当たり前に存在しますが、一般的にはまず経験しないこと。
たしか絵の具メーカーの工場見学会などで「絵の具をつくる」体験があったような気がしますが、美術の授業では取り入れると面白いでしょうね。

顔料のもとになる岩石採集からするとかなら、専門学校のゼミでも可能かもしれません。

2013年4月25日木曜日

展覧会のススメ?

六本木ヒルズ森アーツセンターギャラリー「ミュシャ展 パリの夢 モラヴィアの祈り」が開催中です。(5/19)

デザイン学校のデザイン史の授業でも必ず触れる、アール・ヌーヴォーを代表する画家ですから、学生さんには必ず見に行って欲しいと思っているのですが、授業はまだ始まったばかりでアール・ヌーヴォーのポスターはGW明けの登場。
ということは展覧会の会期終了まで1週間ほどになってしまい、とても忙しいことに。

良い機会なので見に行って下さいと言っているものの、授業で詳細に触れてから見て欲しいという気持ちもあり複雑です。

それでも展覧会は「時間的に行けそうなら行く!」が基本なのでしょうね。
予習ということで、みなさん見に行って下さい。

2013年4月24日水曜日

苦甘山菜。


八百屋さんで見た事のない山菜が並んでいました。
細長く伸びた新芽で、ギョウジャニンニクのようでもあり、ウルイのようでもありますが、そのどちらでもありません。

ラベルはアマドコロとあります。
スズラン科の多年草だそうで軽く茹でるらしい。
基本的に山菜系は好きなので(ただの草ですよね)、さっそくお試し買い。
調べると部位によって固さや味が異なるので、サヤを剥いで先端の葉と茎を分けて茹でるとありました。
言いつけ通りに分解し時間差で茹でてタケノコの穂先の薄切りと合わせて酢のものに。
サヤはミョウガのようにシャキシャキして、葉は苦味と甘味を感じ青ネギのような感じ、茎は細いアスパラガスのよう。
なんとも不思議で美味な山菜でした。

どうやらお茶にして飲むことの多い山菜のようですが、部位による風味の違いが楽しく、とても美味しかったので見つけたらまた買ってしまいそうです。
<アマドコロの酢のもの>
アマドコロはサヤ、葉、茎に分け、茎、サヤ、葉の順に素早く茹でる。
食べやすい大きさに切って二杯酢で合える。仕上げにゴマ油を2、3滴垂らす。
タケノコの穂先の薄切りを合わせましたが、エノキなどと合わせてても美味しいと思います。

2013年4月23日火曜日

アナログでも。

デザイン学校では専門教育と通信高等学校のダブルスクール制度があって、今年も新しい高校生が入学してきました。
3年間でデザインをみっちり学ぶ訳ですが、1年目は特に基礎的なデザインを(アナログで)しっかり学ぶことで2年目、3年目の学習につなげていきます。

第1回目の授業のテーマは直線。
数学的、図形的な側面からの「直線」の理解をしてから、デザインワークとしての直線表現の演習を行いました。

細い面相筆を用いてフリーハンドではなく定規を使って直線を描く「溝引き」。
等間隔に引いた鉛筆の下書き線をなぞるだけですが、はじめはフリーハンドより曲がってしまいます。

何本か引くうちに少しずつ慣れてきて、力の入れ方が解ってきたようです。


2013年4月22日月曜日

新年度の気合。

ゴールデンウイーク前の月曜日。今年度初めての高校の授業が始まりました。
高校の新年度は学校行事が多いため、なかなか授業が始まらない上に1年生はオリエンテーション授業があって通常授業は遅れてのスタートでした。

今年度から担当科目が変わり、美術を担当。
初回は鉛筆削りから。

カッターナイフの使い方や、芯の長さなどを見せるために指導用の鉛筆を削ったのですが、1本削ったら他の丸まった鉛筆まで気になってしまい、結局20本の見本ができました。
削ったばかりの鉛筆が並ぶとさあ描くぞ。という緊張感があっていいですね。

2013年4月21日日曜日

年に2度美味しい


晩秋が旬のイメージが強いナガイモは、晩秋の11月から12月に収穫される「秋掘り」と、3月から4月に収穫される「春掘り」があるので、実は今も旬。
水分が多くみずみずしい秋掘りものに比べ、春掘りものは冬の間に雪の下で眠っていたため水分が減り粘りの強い凝縮された味。

生でそのまま食べるだけでなく加熱してもほっくりと美味しいので、素焼きや味噌汁の具などで大活躍。

しっかり水切りした豆腐と一緒に炒めました。
加熱するとふわっとした食感になってとても美味しいです。
<くずし豆腐とナガイモの塩炒め>
ゴマ油をフライパンで加熱し、水切りした豆腐を崩しながら加えて炒める。水分をしっかり飛ばしたらみじん切りにしたナガイモを加え炒め、塩で味を整える。
器に盛ってから小ネギを掛けコショウを振る。

2013年4月20日土曜日

タケノコ三昧。その3


タケノコ料理で最上級に贅沢なのは刺身なのでしょうが、こればかりは掘りたてでないと味わえないので、まだ経験がありません。

現時点でタケノコ料理の一番の贅沢といえば、薄味の出汁とタケノコだけで炊いた「タケノコご飯」です。

炊き込みご飯はついついいろんな具材を入れたくなりますが、タケノコの香りを楽しみたいので他の具材は入れない。
丸のままのタケノコが手に入る時だけの贅沢です。

下処理で煮てあるので再度の加熱には根元を中心に。
穂先は薄切りで炊きあがりにのせて温める程度に、混ぜ込まないで飯椀にご飯をよそったあとにのせると見た目にも嬉しいですね。
<タケノコご飯>
米に対し、やや薄めの出汁、酒、醤油、みりん、塩を加えた分量通りの水加減で、薄切りのタケノコを入れて炊く。(醤油は入れ過ぎると色が濃くなるので、薄口か分量を少なめに。)
炊きあがったら穂先を入れて蒸らす。

2013年4月19日金曜日

タケノコ三昧。その2

タケノコの楽しみのひとつに部位による食感の違いがあります。穂先の柔らかい食感。中間部の適度な歯ごたえと風味。根元のしっかりした歯ごたえ。

下処理でアク抜きして柔らかくなったタケノコの穂先と中間部を使った煮物は薄味で上品に仕上げてタケノコの風味を楽しみたいですね。
同じく春に収穫される新ワカメと一緒に煮た若竹煮は春の代表的な料理です。
<若竹煮>
下ごしらえしたタケノコを一口大に切り、出汁、醤油、酒、みりん、砂糖、塩で静かに煮る。ワカメは最後に温める程度で。

2013年4月18日木曜日

タケノコ三昧。その1

4月も半ばを過ぎ少しずつ新年度が落ち着いて来た感じです。気候の方も春の嵐がやっと落ち着いてきたようで、毎日が過ごしやすくなってきました。

春の味覚の代表のひとつであるタケノコ
タケノコの中でも早くに出回る孟宗竹は、存在感があって店頭に並ぶだけでも嬉しくなってしまいます。
4月半ばの最盛期。価格的にも落ち着いて手が届きやすくなりました。

朝掘りタケノコに午前中に出会えたので、久しぶりに丸のまま購入。
2-3日は楽しめそうです。

下処理したタケノコは、そのままでも充分美味しいので、まずは軽く炙って塩味だけで。
甘味と香りがたまりません。
<タケノコの炙り>
下処理したタケノコは薄切りにしてバーナーで炙り、オリーブオイルを振り、白髪ネギをのせ、塩を添える。

2013年4月17日水曜日

デザインと素材


竹尾見本帖本店で開催されていた「造る箱」展の最終日に滑り込みで行ってきました。(会期終了)

パッケージ制作用に新しく開発された気包紙の発売を記念した展覧会で、5組のデザイン関係グループによる気包紙を用いたパッケージ作品の展示で、折りの複雑さやカット模様が多彩で、中には展開したものなどもあり楽しいものでした。

この気包紙は、しっかりした厚みと折った時の割れが極力少ない紙で、印刷の乗りを良くした塗工紙も用意されているので様々なパッケージで使われそうな紙です。

一般的に印刷に適したパルプは繊維の短い広葉樹を用いて表面を滑らかにしているそうですが、強度を上げるために繊維が太く長い針葉樹を多く混ぜ込むことで割れにも強い紙質を実現したということです。

新しい紙の発売記念ということで、もう少し実験的なものがあっても良かったのかなという印象も受けましたが、素材の特徴とデザイン展開例がわかりやすい展覧会でした。

この展覧会も会期終了日に知って急遽訪れましたが、このところ情報収集と整理がどうも上手くありません。
新年度が始まりデザイン学校の学生さん達にもいろいろ見てもらいたいので、もう少し早めの告知が必要と反省です。

2013年4月16日火曜日

冬と春の入替

桜が落ち着いてすっかり新緑で景色が変わりました。まだまだ緑が黄緑色で柔らかいこの時期は花見ならぬ若芽見にいい季節ですね。

そろそろツバメが飛来するこの時期は、冬鳥春鳥の入れ替わりの頃ですから種類も豊富。林の散策が楽しみな時期です。

繁殖期を迎えて賑やかなシジュウカラのさえずりに誘われて木立の下へ行くと、カサカサと移動する野鳥の気配。

ヒヨドリより少し小さいツグミが地面をついばんでいました。
冬季に日本に飛来して越冬するツグミはそろそろシベリアに渡るのでしょうからまた10月頃まで見られなくなります。

遠目に10羽ほど確認できたので少しずつ近づくと、ツグミにまぎれてシロハラが確認できました。シロハラもツグミ科で大きさもほとんど同じ。ツグミに比べ身体の模様がすっきりしているシロハラですがとても上品です。
やはり冬鳥なのでそろそろ見られなくなりそうですね。

2013年4月15日月曜日

春を乗り切る


気候が今ひとつ定まらない春先は体調を崩しがち。
ビタミンB1βカロテンを多く含み免疫力を高め肝臓の解毒作用を強化してくれるニラは今が旬なので登場回数も増えます。

餃子やニラレバといったガッツリ系のイメージが強いニラですが、春雨を使ったフォー仕立てのスープで軽めに調理。
昼ご飯や夜食のようでもあります。
<ニラの春雨スープ>
鶏ガラスープ、ナンプラー、ドライショウガでスープを作り、シメジ、戻した春雨を入れる。塩コショウで味を整えたらニラを加えすぐ火を止め、仕上げにゴマ油を加える。器に盛って針ショウガをのせ、食べる直前にレモンを搾る。

2013年4月14日日曜日

写っていない空間


CHANEL NEXUS HALLで開催中の「OUTLANDS Aram Dikiciy​​an(アウトランズ/アラム ディキチヤン写真展)」に行ってきました。

ベルリンで活躍し現在は東京で活動している写真家でだそうでです。
デジタルではなくフィルムカメラで撮影されたモノクロ写真は、粒子の粗いハイキーな調子で表現され、現実感のない空間として感じられます。
情報が極端に省略された写真からは、写りすぎている写真よりも奥行きを感じ鑑賞者のイメージを膨らませてくれます。
写真の歴史は光の調子もディテールも細部まで良く写ることを追い求めて発展してきましたが、逆に写らないことを求めた表現はとても新鮮でした。

2013年4月13日土曜日

文字の作品


ギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催中の「TDC展 2013」に行ってきました。(4/27まで)

東京タイプディレクターズクラブが主催する毎年恒例のグラフィックデザイン分野の国際的なコンペの成果展です。

グランプリをはじめ見応えのある作品ばかりですが、中でもTDC賞を受賞した「横書き仮名の開発」は面白い作品でした。

日本語の仮名文字は縦書きを前提に作られているため横書きには適さない構造ですが、現代では日本語は横書きされることがとても多くなったように、もともと横書き文化だったら仮名はどのように生まれたかを考察した作品で、すべての仮名文字が左上から右下への動きで設計されています。

若干画数が多いの印象ですが、欧文書体のようにスクリプト書体も作られていてとても完成度が高く、実用化されれば日本語の表記自体が変わって行く可能性を感じさせる作品です。

文字が単なる情報伝達の記号ではなく、グラフィックデザインの表現の一部であることが再認識できる展覧会ですから、デザインを学んでいる学生さんにはぜひ見て欲しい展覧会です。

2013年4月12日金曜日

FENDIに感心。


上野の東京藝術大学大学美術館で「FENDI」の展覧会が開催されているという情報がありました。芸大でFENDIというのが何かありそうに感じたので詳細もわからず行ってみました。

「FENDI-UN ART AUTRE 〜フェンディもうひとつのアート、クリエイションとイノベー ションの軌跡〜」という展覧会。(4/29まで)

ファーのクリエイションにおいて第一人者である「FENDI」の世界観がファッションデザインの観点と職人技との視点で展開されています。

会場にはFENDIの職人が常駐(日本語が堪能)し、解説もしてくれました。

展示のすべてが感心することばかりですが、中でも一番感心したのが「レットアウト」という技術。
毛皮はサイズに自由度がないため、特に小さいミンクなどはデザイン的に長い毛皮が欲しい際、毛皮に細かい幅でV字カットを入れ、その後長さ方向にずらしながら縫い直すと表からはまったく毛皮の風合いが変わらず長い毛皮を作れるというもの。直角をV字にすると長くなるということで、ストレッチ素材である皮革だから可能な技術ですね。言葉では説明が難しいのですが、これを実際に見本を見せて解説してくれます。
同じようにテンなどの細いものは逆にずらして縫い直し幅を出す「レットイン」という技術もあるそうです。
会場を賑やかに飾るファーのドレス群やカール・ラガーフェルドのインタビューよりもこの職人さんの解説が面白かったです。

素材の探求とデザインを可能にした技術がこれほどすごいものとは知りませんでしたので、ブランドとしてのFENDIを見る目が変わります。一見の価値有り。久しぶりに興奮した展覧会でした。

2013年4月11日木曜日

100から生まれた60。


クリエイションギャラリーG8で開催中の「平野敬子展 Vision and Realization」を見に行ってきました。(4/26まで)
第15回亀倉雄策賞受賞作品の「東京国立近代美術館 60周年」を紹介する展覧会です。

東京国立近代美術館 60周年のシンボルマークは正方形のグリッドに沿った水平垂直と45度のラインでできたデザイン。
このデザインを制作するにあたり先に制作されていた美術館のシンボルマークの骨格と、100周年のシンボルを先に考えたというのですから驚きです。
デザインワークでは多くのアイデアを捨てて行くことが仕事でもありますが、そのアイデアのスケールがとにかく大きいです。このシンボルマークを展示する会場のシンプルな構成にも納得でした。

2013年4月10日水曜日

駅構内探検。

少し前に駅の上家(うわや)に使われる古レールのことを書きました。
新しい駅の上家が古レールで作られることはないので減る一方ではありますが、まだまだ都心でも残っているところがあるようです。

普段は上を眺めたりしないですから、意識していないとなかなか気付かないですよね。

JR中央線の御茶ノ水駅
ホームの上家にも古レールが残るのですが、この駅の見所は、線路の上をまたいでホームとホームを移動し聖橋口へとつながる跨線橋(こせんきょう)。
この構造部分に多くの古レールが使われています。
もちろんH型のアングルも使われていますが、古レールはHの片側が丸みを帯びているため影の付き方が違い視覚的なアタリがやわらかいのが特徴。鉄骨の構造体のガチガチ感が和らいでとてもいい感じです。

歩いている時の視線には多くの広告などが目に入るので感じませんが、上を見上げると「どこの古びた駅だ?」と思うほどのディテールです。
手前の明かり取りの古び感や奥のヴォールト天井などけっこうツボですが広告が邪魔です。

>>以前の古レールのブログ記事

2013年4月9日火曜日

思いがけず


中途半端に残ったトマトソース。
わざわざ冷凍するほどでもないし、かといってそのまま使うにはちょっと量が少ない。
「トマトを加えてかさ増し」も考えたのですが、水分を飛ばすのに煮込む手間が惜しく、豆乳を加えてトマトクリームソースにすることを思いつきました。

出来たソースは豆腐にからめて豆腐グラタンに。
冷や奴の予定が思いがけずボリュームアップの一品です。

何気ない白のグラタン皿は戦後のデッドストック。
一般的なグラタン皿は1人用でも結構大きなサイズですが、このグラタン皿は小振りで便利。余計な装飾がないところも使いやすいです。
<豆乳のトマトクリームソースで豆腐グラタン>
トマトソースを温め豆乳を加え塩コショウで味を整える。耐熱皿にしっかり水切りした豆腐を並べソースをかけ、チーズを乗せてオーブンで焼く。

2013年4月8日月曜日

見ておきたい展覧会


4月も第2週となり新学期がはじまります。
学生さんはまだオリエンテーションなど時間的には余裕のある時期ですから、課題に追われる前に展覧会にくり出すのも良さそうです。
まだ開催中で見ておきたい展覧会。まもなく始まる展覧会をまとめました。
会期終了間近になると混み合うので早目に見ておきたいですね。


平野敬子展「Vision and Realization」
クリエイションギャラリーG8
(開催中-4/26)
第15回亀倉雄策賞受賞作品の「東京国立近代美術館 60周年」を中心としたグラフィックデザイナー平野敬子氏の個展。

TDC展 2013
ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)
(開催中-4/27)
東京タイプディレクターズクラブ主催の「東京TDC賞 2013」の成果展。

アーウィン・ブルーメンフェルド 美の秘密
東京都写真美術館
(開催中-5/6)
各国の美術館に散在しているファッション・ポートレイト全盛期に活躍したブルーメンフェルド氏の作品を復元も含め100点ほどが展示される貴重な展覧会。

マリオ・ジャコメッリ 写真展
東京都写真美術館
(開催中-5/12)
ハイコントラストなモノクロームの組写真で抽象世界を表現した写真展。

複製そして表現へ 美しさを極めるインクジェットプリントの世界
印刷博物館P&Pギャラリー
(開催中-5/12)
4大印刷技法に加えて第5の印刷技法として現代に定着したインクジェットプリントの先端表現の展覧会。

坂 茂 建築の考え方と作り方
水戸芸術館 現代美術ギャラリー
(開催中-5/12)
紙管建築で知られる建築家の坂茂氏の日本初の大規模展覧会。

ミュシャ財団秘蔵 ミュシャ展-パリの夢 モラヴィアの祈り
森アーツセンターギャラリー
(開催中-5/19)
アール・ヌーヴォーの代表的な作家であるミュシャの展覧会はこれまでも数多く開催されていますが、有名なパリ時代の作品にとどまらない展示が期待大。

東京オリンピック 1964 デザインプロジェクト
近代美術館ギャラリー4
(開催中-5/26)
日本のデザインは東京オリンピックで確立されたと言ってもいいほどのプロジェクト。その全貌を紹介する展覧会は必見。

カリフォルニア・デザイン 1930-1965 -モダン・リヴィングの起源
国立新美術館
(開催中-6/3)
20世紀のデザイン史の中で必ず触れるカリフォルニアの「ミッドセンチュリー・モダン・デザイン」を断片でなく幅広いジャンルで紹介される期待の展覧会。

貴婦人と一角獣展
国立新美術館
(4/24-7/15)
フランス国立クリュニー中世美術館の至宝「貴婦人と一角獣」の連作6面すべてが日本初公開。日本だけでなくフランス国外に貸し出されたのは過去一度のみという貴重な機会。

2013年4月7日日曜日

森の神殿

春休み中の先週末に行った「エドワード・スタイケン写真展」
世田谷区の砧緑地内にある世田谷美術館で開催されていました。

世田谷美術館は建築家の内井昭蔵氏の設計。
遠目には明るい灰色と灰みのある赤と緑で公園の景観に馴染んでいるこの建物は、近づくと三角形と正方形の連続で囲まれたディテールが際立ち印象的な造形。この幾何学模様がかえって有機的に感じられるデザインとなっているから不思議です。

建物表面の正方形のパターンは一見タイルのようですが、コンクリートによる造形なのでとても凝った作り。美術館の開館当時から神殿遺跡のような印象を受けましたが、30年ほど経ってコンクリートのカドが馴染んでより遺跡感が増した気がします。今後もより一層風化が楽しみな建物ですね。

この美術館は最寄り駅の用賀駅からでも徒歩20分ほどかかるのですが、1986年の開館に合わせ、駅から美術館まで整備された「用賀プロムナード」(設計:象設計集団)があって、黒っぽい瓦を敷き詰めた歩道には水路が流れ、所々に架けられた橋や休憩スポットのベンチなどが周囲の街並みとは全くマッチしない異次元空間として続いています。

今回は車で出掛けたので用賀プロムナードは通らなかったのですが、久しぶりにあの空間を歩いて見たくなりました。

7月には期待の展覧会「榮久庵憲司とGKの世界」が開催されるので、その時は用賀から歩いてみようと思っています。

2013年4月6日土曜日

見た目は豪華

マサバが安い。
ということで1尾持ち帰って調理しました。
〆鯖もいいのですが、冷蔵庫に残り物のホウレン草トマトソースを発見したので洋風に。
魚は刺身でと思うとなかなか下ごしらえが大変ですが、焼くだけなら骨を抜く程度で楽ですから、その分ソースに手がかけられます。
トマトソースはほぼ出来ているのでホウレン草のソース作り。こちらも茹でてミキサーでピュレにしてしまえば味を整える程度なので、始めてしまえばさほど面倒でもありません。

赤と緑の2色ソースでクリスマスみたいになってしまいました。
タイやスズキを使うともっとカッコつきます。

<サバのポワレ2色ソース>
トマトソースは水煮缶をシノワかザルで濾し、ニンニクの香りを移したオリーブオイルで煮詰め塩コショウで味を整える。ホウレン草はやわらかく茹でて炒めたタマネギとともにミキサーでピュレにする。ニンニクの香りを移したオリーブオイルで煮詰め仕上げにバターを加え、塩コショウで味を整える。
サバは骨を抜き、塩コショウをして水分が出たらしっかり拭き取り、皮面だけに切り込みを入れオリーブオイルで両面焼き付け、皿に敷いた2色のソースの上に乗せる。

2013年4月5日金曜日

画面構成と明暗

世田谷美術館で開催中の「エドワード・スタイケン写真展」に行ってきました。(4/7まで)

今回の展覧会は2007年のパリから世界各地を巡回中のもので、日本での展覧会は1/26からでした。昨年の秋から開催を知っていたのですが、チェックし忘れて終了ギリギリに飛び込んだ次第。終了前に気づいて良かったです。

写真家エドワード・スタイケン氏はアメリカの写真界の巨匠の一人で、商業写真のポートレートの第一人者。ポートレートと言ってもその表現は被写体の人としての内面に迫るようなものから、作られた虚構の世界を表現するものまで様々。
スタイケン氏のポートレートは女優や著名人の素顔ではなく、一般的なイメージを最大限に演出し表現したもので、そのためのモデルや小物の配置から背景の明暗比までその画面構成力は抜群。
コマーシャルポートレートが作られた芸術写真であることがよくわかります。

近年デザイン学校のグラフィックデザイン専攻の学生さんでスタジオポートレートを撮りたいという熱が高まっています。ひとつにはカメラが身近になって、人を撮る機会が増えたものの照明機材までは個人ではなかなか揃えられないということがあるのでしょう。
まもなく新年度の授業がはじまりますが、通常授業ではなかなかできなくても課外やゼミなど、照明に触れる機会を増やせればと考えています。

「エドワード・スタイケン写真展』は4/7(日)までの開催ですが、ポートレート好きには学ぶことも多い写真展ですからぜひ見て欲しいですね。



2013年4月4日木曜日

増殖性模型


メゾンエルメスのフォーラムで開催中の「パラの模型 / ぼくらの空中楼閣 パラモデル展」に行ってきました。(5/6まで)
メインの展示室はメゾンエルメスの特徴的なガラスブロックと同サイズのキューブがアルミと木材で組まれ、室内空間を埋め尽くすように吊られています。そのキューブの構造体は無機質な物体ながら有機体のように増殖するかのように感じられ、ガラスブロックを通り越してさらに外の空間へと広がるような錯覚すら感じさせます。

パラモデルはプラレールなどを用いた作品のようにコアとなるパーツを汲み上げて行く構造体の模型作品で知られるアートユニットですが、より空間性に特化した作品表現となっていました。

2013年4月3日水曜日

空気へのドローイング

エルメス銀座店(メゾンエルメス)のディスプレイが面白いです。

空間に筆でドローイングされたような作品は張り巡らされたテグスにウールを巻き付けたアートで、イタリアのデザイナーであるアンドレア・マンクーゾ(Andrea Mancuso)氏と建築家のエミリア·セラ(Emilia Serra)氏のユニットによる長期的なプロジェクト「アナロジアプロジェクト(Analogia Project)」の作品。

正面玄関脇のメインウィンドウも良いのですが、サイドの小窓ディスプレイではエルメスの商品が活かされたテーマがレンゾ・ピアノ(Renzo Piano)氏の設計したガラスブロックの無機質さと対照的で際立っています。
エルメスのサイドウィンドウはガラスブロックひとつ分のサイズ(全面428mm角)がちょうど良く、毎回もって帰りたくなってしまいます。

2013年4月2日火曜日

待たされた。

「金沢21世紀美術館」で2007年11月から2008年3月にかけて開催された「荒野のグラフィズム:粟津潔展」

前衛美術家でありデザイナーの粟津潔氏が所蔵していた2800点もの作品が金沢21世紀美術館に寄贈されたことで実現した展覧会ですが、美術館の大きな展示壁をいっぱいに使っても展示しきれないほどの作品群で、会場が金沢でなければ何度か通いたかった展覧会でした。

その展覧会中のレクチャーやワークショップなどの映像作品をはじめ、膨大な作品データを収録した展覧会カタログ「粟津潔、マクリヒロゲル」が展覧会終了後の2012年に刊行。
予約が殺到して何度も納品が延期されていましたが先日やっと手元に届きました。あまり待たされたので制作はデマか?とまで思いましたがその内容を見て延期が納得。
作品データベースのDVDの作りからブックデザインまで手を抜かない丁寧な作り。

2枚組のDVDのうち作品データの1枚はデジタルブックを意識したレイアウト。データ一覧の閲覧や動画の再生もレイアウトページから操作できる作りですから作品のデータベースとしても活用しやすい編集です。




2013年4月1日月曜日

生命のうたから


ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)で開催されていた「LIFE 永井一正ポスター展」の最終日に行ってきました。(会期終了)
グラフィックデザイナーの永井一正氏は、1994〜2000年までのJAGDA(日本グラフィックデザイナー協会)の会長を務め、現在は日本デザインセンター最高顧問でもあり、日本のグラフィックデザイン界に最も影響力のあるグラフィックデザイナーの一人。

gggでの個展は今回で4回目となりますが、今回は永井氏が80年代から制作しつづけている「動物をモチーフ」とした「LIFE」のシリーズ。
当初の銅版画で制作された「生命のうた」シリーズから特殊印刷によるオフセットへと代わりましたが、手描きのタッチを活かした作品の魅力は変わっていません。
※(「生命のうた」はPC版ブログでは「おすすめの本」でも紹介しています)

展覧会カタログ「LIFE 永井一正ポスター展」も刊行されましたが、今年3月に刊行された「永井一正ポスター美術館」がおススメ。