2017年6月23日金曜日

進化する展覧会

東京都美術館で開催中の「ブリューゲル『バベルの塔』展」を見てきました。(7/2まで)

ブリューゲルは「バベルの塔」を3点描いたとされていますが、現存するのは2点。
ウィーン美術史美術館が所蔵する全体に色調が明るいものと、ボイマンス美術館所蔵の暗い色調のもの。
今回来日したのはボイマンス美術館所蔵のいわゆる「小バベル」と呼ばれる作品で、小さいながらブリューゲルの最高傑作とも言われる名画です。

ブリューゲル自体はあまり日本で一般受けしないだろうし、と油断していましたが、会場は大混雑。他の作品も小さく間近で見たいので順に並んでみるしかなく、けっこうな時間がかかりました。

この展覧会。
3DCGで細部を詳細に再現した映像や、肉筆によるディテールと高精細印刷で縦横3倍にプリントした複製が展示されていて、名画のオリジナルを生で鑑賞するだけでなく、分析、解説にとても力を入れている点がこれまでの展覧会とは大きく進化していました。

2017年6月7日水曜日

色紙に恋する。

世田谷美術館で開催中の「エリック・カール展 The Art of Eric Carle」に行ってきました。(7/2まで)

あまりに有名な絵本「はらぺこあおむし」の作者であるエリック・カールですが、その作品のほとんどがグラシン紙という薄手の紙に着色を施した色紙を切って貼るコラージュでできていて、そのコラージュの魅力は何と言っても素材感。

貼った紙の材質感や貼った時のしわ感といったものなのですが、絵本は印刷物なので紙の質感や表面の凹凸もなくなってしまい、せっかくのコラージュによる表情が半減されてしまいます。

絵本としては印刷物で十分楽しめるのですが、細部まで確認できる原画展はとても貴重。

原画自体は大きくないので、混雑してしまうとなかなか近くでは見られないのでしょうが、平日でしたので家族連れも少なくじっくり鑑賞できました。

ミッフィーなどの絵本展では、原画以外に作品に絡んだイベントや仕掛けがあって子ども達が楽しめるコーナーが作られていたりしますが、この展覧会はじっくり作品を鑑賞することがコンセプトなのか、展示はかなり地味です。
そこがまた良いのですが。


以前のブログでも紹介しましたが、エリック・カールが制作した華やかな色紙を印刷して閉じた「Eric Carle/You Can Make a Collage」というコラージュのための素材本が出版されていておすすめ。
とても綺麗な本で見ているだけで楽しくなります。



2017年5月24日水曜日

たくさんのモノが集まると。

「『柳本浩市展』“アーキヴィスト ー 柳本さんが残してくれたもの”」を見てきました。

稀代のコレクターでデザインディレクターの柳本浩市さんが残した莫大なコレクションの一部が自由が丘の「six factory」という倉庫で展示されています。(〜6/4まで)



最近では2016年に21_21 DESIGN SIGHTで開催された「雑貨展」でもコレクションの一部が展示されていましたが、そのコレクションの数は個人コレクションとは思えないほど。
今回の展覧会では、コレクション資料のファイルも展示され、手にとって見ることができます。

個人がこれだけのコレクションをしていたことを見せられると、「もっと集めて良いんだよ」「集めることに意味があるんだよ」と励まされている気がしました。

2017年5月23日火曜日

住まうカタチ。

映画「人生フルーツ」を見てきました。



建築家であり都市計画家の津端修一さんと英子さんの暮らしを撮ったドキュメンタリー映画です。

津端修一さんはアントニン・レーモンドや坂倉準三の元で建築を学び、高度成長期に多くの団地の住棟配置の設計を手掛けた建築家。

風が通る里山的な団地の構想を持ちながら実現しなかった夢を、アントニン・レーモンドの自邸を模した設計の平屋建てに込め、敷地の2/3を占める庭に雑木林と畑をつくり、自然の恵みとともに暮らしてきた姿が描かれています。

また、住まいのあちこちに見られるロープ使いも、ヨット部出身の修一さんならではの工夫が活きていて、見どころのひとつ。

2016年に東海テレビで放送され劇場版に再編集され2017年1月に劇場公開された話題作。

人と住まい方について考えさせられる素敵な映画です。

2017年5月16日火曜日

華麗を作る裏側。

「メットガラ ドレスをまとった美術館」を見てきました。



メトロポリタン美術館(MET)衣装研究所部門  (The Costume Institute)の1年間の活動資金を集めるために開かれるファッションの祭典(ガラ)を撮ったドキュメンタリーで、2015年の企画展「鏡の中の中国(China: Through The looking Glass)」の企画から開催までを同時に追いかけている点が、かなり泣かせる内容。

見どころのひとつは企画展「鏡の中の中国」のキュレーターを務めるアンドリュー・ボルトンと、祭典(ガラ)を取り仕切る雑誌『VOGUE』の編集長アナ・ウィンター(「プラダを着た悪魔」のモデル)の奔走ぶり。
リーダーでありながら仕切り方の違いがそここに感じられるものになっています。

もうひとつの見どころが展覧会を飾る展示空間とロビー空間。
アジア芸術部門(Asian Art)のスタッフの全面的な協力で完成した意匠は、アジア芸術=安いシノワズリーで終わらない、華麗で豪華なスケールの大きい空間に仕上がっています。

タイトルが「メットガラ」なので、展覧会のオープニングでもある祭典(ガラ)の描写をもう少し丁寧に見せてほしかったという感じもありますが、豪華絢爛な世界の裏側が見られるこの映画は、ものを創り出すことの凄さを味わえる楽しいものに仕上がっていました。

2017年5月12日金曜日

金目ダル。

魚の煮付けというのは、頬張った時のふわっと、ほろっとした食感がたまらなく幸福感を味あわせてくれて、旨い刺身を食べた時の幸福感とはまったくことなる位置にいるものだと常々思っています。

なかでも金目鯛の煮付けはやはり最高。

しっかり濃いめの甘辛い煮汁がよく合います。

そして添え物には根菜。
定番のゴボウも良いですが、レンコンもいい味だしています。

<金目の煮付け>
残っているウロコがあれば丁寧に取り、下ごしらえして熱湯を掛けて霜降りにしておく。
醤油、砂糖、みりんを鍋で沸かし、下処理した金目鯛を入れる。
一煮立ちしたところに水と酒、ショウガを加えて落とし蓋をして煮付ける。
途中でレンコンの輪切りを投入して一緒に煮る。
器に盛り、針生姜を添える。

2017年5月10日水曜日

製図用具とデザイン

デザイン学校で作業中の生徒さんの机の上にとってもステキなパッケージを発見。

図面を描くための紙を製図板に仮止めするための「製図用テープ」です。
マスキングテープのように粘着力の弱いテープですね。

もらいものだそうですが、いつ頃のデザインでしょうか。
カラーリングといい図柄といい、きっちりした製図感が出ていて素晴らしいです。
裏面のロゴマークも磁器の窯印のようで気品がありますね。


この手のテープは10巻がひとまとめになって出荷されたものが、店頭でバラして販売されたりすることも多く、その場合はパッケージはありません。
また、個包装で販売されるものも、ビニールのパッケージでなんとも味気ないものになっています。

たかがテープですが、ひとつずつ箱に入っていることで、とても特別なものに感じます。

2017年5月6日土曜日

ちょっと欲しい。

銀座のクリエイションギャラリーG8で開催中の「渡邉良重展  絵をつくること」を見てきました。(開催中〜5/20まで)



第19回亀倉雄策賞を受賞した「洋菓子『AUDREY』のパッケージデザイン」を中心とした展示で、渡邉良重さんのワールドがとても可愛らしく展開されています。

「洋菓子AUDREY」は、GRAMERCY NEWYORK(グラマシーニューヨーク)、GIOTTO(ジョトォ)を展開するPlaisir(プレジィール)のイチゴスイーツブランドで、2014年に横浜高島屋にオープン。
2016年4月には日本橋高島屋に2店舗目が出店。東京初進出で話題になりました。

展示を見た後にショップへ足を運びましたが、すべて完売。
なかなか手に入らないようでした。
平日の午前中が狙い目でしょうか。


2017年4月15日土曜日

これまでにない。

国立新美術館で開催中の「ミュシャ展」に行きました。



入場券売り場は大行列。

ミュシャの人気もありますが、草間彌生展がものすごいことになっているようで、チケット買っても展示室前でまた行列していました。

こちらはちょっと無理そうですね。

さて、ミュシャ展はアール・ヌーヴォーのポスター展として比較的頻繁に開催されますが、今回のミュシャ展はこれまでのミュシャ展とは大きく異なり、日本初公開の「スラヴ叙事詩」の大作、全20展がメインです。

50年以上ほとんど人目に触れなかった晩年の大作20点がまとめて公開されるのは、ミュシャの故郷であるチェコ国外では今回が世界で初めて。

当然混み合ってとんでもないことになるだろうと予測していましたが、巨大キャンバスの作品を鑑賞する空間なので、鑑賞者が多くても「とても見られない」ということはなくしっかり堪能できました。

晩年の作品でもあり、テーマも馴染みのものとは異なる「スラヴ叙事詩」は、ミュシャのイメージを大きく変えるかと思いましたが、ところどころにミュシャらしいタッチや表情、構図やモチーフなどがあり、良い意味でやはりミュシャはミュシャなのだなと妙に関心。



チェコの市民会館の天井画やペンデンティブに描かれた図案画なども展示され、馴染みのリトグラフによるのポスターの展示を極力少なくして油彩を多く展示したとが、展覧会により深みを出していたと思います。

ミュシャに馴染んでいる人にこそ見て欲しい展覧会でした。

2017年4月3日月曜日

良質な脂。

桜が咲き始めていよいよ春本番。
冬の間ベランダから室内に入っていたアボカドの苗木もそろそろベランダに戻しても良いかもしれません。

手に入るほぼ100%が輸入もののアボカドは、メキシコやニュージーランドなど温かい地域で生産されているイメージがあって、旬が夏なようなイメージですが、実は夏に実をつけ秋に収穫されるので、秋から冬が旬なようです。

加熱しても美味しいアボカドを鶏肉と炒めました。
栄養価の高いアボカドですが、ビタミンは加熱により損なわれるので、加熱しすぎに注意です。


<鶏とアボカドの炒め>
鶏肉は一口大にカットして下味をつけておく。フライパンにオリーブオイルを引き、鶏肉をじっくり炒めたらアボカドを加えて炒める。
アボカドは角が取れて少し焼き色がつくくらいでOK。醤油、塩胡椒で味を整える。

2017年4月2日日曜日

ファッションとテキとグラフィック

クリエイションギャラリーG8で開催されていた「mintdesigns / graphic & textile works 2001-2017」のレビューです。(会期は終了)



ミントデザインズは日本のファッションブランドですが、「身につけることのできるグラフィック」というコンセプトの通り、プロダクトデザインであるファッションアイテムをグラフィカルな側面から展開。

細分化されるデザインジャンルを融合した納得の展覧会でした。


展覧会では、ミントデザインズのコレクションの展示とデザインのアイデアソースがインスタレーション作品として展示され、刺激的な空間構成を展開していました。

2017年3月31日金曜日

馬具からのファッション。

銀座メゾンエルメスと表参道ヒルズのスペース オー「エルメスの手しごと展」が開催されていました。(会期終了)

メゾンエルメスでは“メゾンへようこそ”と題して映画上映やトークセッションが、スペース オーでは“アトリエがやってきた”と題して様々なエルメス商品の職人が実演。

まったく異なる会場でしたが、同じテーマのイベントとして統一感のある広告を展開。

手しごとで使う工具のシルエットが組み合わさったビジュアルが斬新です。

開催直前に新聞に掲載された広告でも15段をメインに、3段1/2、2段1/2、突き出しなど小さい広告が各所に掲載され、楽しく見応えあるものになっていました。



エルメスが発行するカタログ雑誌も贅沢な作りで、メゾンエルメスではバックナンバーも配布していました。

2017年3月29日水曜日

デュボネの紳士。

埼玉県立美術館で開催されていたカッサンドル展

傑作のひとつである食前酒「デュボネ」のポスターは夏バージョンと冬バージョンがあるのが有名ですが、このポスターに登場するユーモラスな紳士は、様々な商品として展開されていました。

展覧会会場にはありませんでしたが、そのひとつにバーのウェイターが注文を取るときに使用するオーダーシートがあります。

おそらくデュボネが配っていたノベルティ。
ただのメモ帳ですが、これがなかなかカワイイ。

10数年前にアンティークショップで見つけたもので、こういうものに出会うと放っておけないので困ったものです。



今回の展覧会では、カッサンドルが1947年にエルメスの依頼で作成したトランプがあることを知りました。



欲しい。

いつかどこかで出会いたいものです。
このトランプの画像はこちら「The World of Playing Cards」のサイトで見られます。

2017年3月22日水曜日

神話のビル

多くの神話を生み出したSONYのショールームであるソニービルディング。

50年の務めを終え3月末を最後に解体されてしまうので、天気の良い日にカメラ持参で撮影のために再訪しました。

エレベーターで最上階へ行き、花びら構造の階層を下って撮影。

インテリアは当時のものを感じさせる部分は少ないのですが、イタリアンレストランの入る 7階の天井はハニカム構造のデザインが現代にないレトロ感で素晴らしく、地下街へつながる階段とエスカレーター室は曲面に照らされる照明が宇宙船をイメージさせる未来的な空間で泣かせます。

屋外は縦に伸びるイメージを強調するルーバーと白いスクラッチタイルのディテールがとても良いコントラスト。(バナーが若干邪魔ではありますが)

ビルの魅力はその形態としての魅力だけでなく、ディテールにもあるのだなと再認識させてくれますね。

一心不乱にビルの撮影をしていたら、たまたま通りかかったデザイン学校の生徒に目撃されていたようでした。




2017年3月18日土曜日

縦の銀座

銀座のソニービルがいよいよ3月末でなくなります。



建築家の芦原義信氏が設計し、1966年に竣工されたビル。

まだまだ現役でと思いますが、見えないところでいろいろあるようで、しかもショールームの構造として考えられた「花びら構造」はユニバーサルデザインの観点からは時代に合わないなど複合的な問題が多いようです。

外観の特徴であるルーバーは解体時にカットされ、刻印されてチャリティ販売するそうです。
モノとして建築物の一部を残す楽しい試みですね。
特設サイトで購入できます。

あと2週間。しっかり写真でも残しておきたいですね。

更地にして2020年の東京オリンピック前後はパークとして利用する計画があり、FREE PAPER「GINZA SONY PARK PROJECTーTHE Journal 」が発行されていました。




2017年3月16日木曜日

復活の椿。

SHISEIDO THE GINZAで昨年11月に新装刊となった「花椿新装刊0号」を見つけました。

2015年の12月号を最後に月刊誌が廃止され、WEBによるデジタル版に移行していましたが、ほぼ1年振りに季刊誌として新装刊。

アートディレクターは資生堂 宣伝・デザイン部の澁谷克彦氏。

今後の展開が楽しみです。

2017年3月15日水曜日

アール・デコとポスター

埼玉県立近代美術館で開催中の「カッサンドル・ポスター展 グラフィズムの革命」を見てきました。(3/26まで)




アール・デコを代表するグラフィクデザイナーで、デザイン史の教科書にも登場しますが、この展覧会ではリトグラフで刷られたポスターの他、カッサンドル自身が描いたポスター原画も多く展示されていますので、原画と版画(印刷)の表現を見比べるのにも最適。

今回の展覧会で発見したものがひとつ。

傑作《ラントランジジャン(1925年)》《ノール・エクスプレス(1927年)》に共通する分銅のような図形。

この形体が何を表現しているのか謎でしたが、作品を目の前にして突然閃きました。

電線の絶縁体である「碍子」。

些細なことですが、こういう発見はうれしいですね。

都心の美術館開催でないのでゆったりと見られるので、デザインを学習している学生さんには必須の展覧会です。