INAXギャラリーで開催中の「にっぽんの客船 タイムトリップ 展」に行ってきました。5/21(土)まで
客船のインテリアというのは特殊な空間なので、とても面白い企画です。
建築家村野藤吾氏らの手描き図面や、当時の図面や写真から起こしたCG映像もとても興味深く、小さいギャラリーながら内容の濃い展示となっています。
インテリアを勉強している学生さんは、見せ方というところだけでも是非刺激を受けて欲しいですね。
さて、展示で一番面白かったのが、「花毛布」。
飾り毛布とも呼ばれ、限られた空間での長旅の中で毎日身体を休めるためのベッドメイクに趣向を凝らしたもので、毛布を花や帆などの形に美しく折りたたんだものです。
このバリエーションが実に豊富で、折り紙という文化を持つ日本ならではの趣向のようで、実に楽しく素晴らしいものでした。
現在も「にっぽん丸」のデラックス以上の上級客室では継承されているようですので、いつかホンモノを見てみたいですね。
寝る時には崩されてしまうはかない飾りですが、こうした「絶対必要」ではない部分での造形的な工夫こそデザインの醍醐味だと思います。
1988年(昭和63年)まで就航されていた「青函連絡船」のサイトに「飾り毛布」としてバリエーションの写真がありますが、スゴすぎます。
2 件のコメント:
INAXギャラリー「にっぽんの客船タイムトリップ」展で「花毛布」の展示と解説に協力させて頂きました、明海大学の上杉恵美です。
「花毛布」は、その継承の歴史だけでなく、造形としても大変ユニークで魅力的だと思います。折り紙とはまた違う大きさと長方形を生かしたダイナミックさ、毛布ならではの柔らかさと折りひだの影の美しさ、同じ作品でも素材や柄によって変わる印象など、奥の深い造形です。
船員たちの創意と工夫で生まれたこのおもてなしの形は、KITAさんがおっしゃるとおり、「寝る時には崩されてしまうはかない飾り」であり、「絶対必要ではない」サービスであるため、マニュアルには残されず、サービスを提供する場も折り手も少なくなっています。
私はこの伝統が今後もを絶えることのないよう、船会社に「花毛布」のサービス提供の継続と継承者の育成を働きかけています。また、毛布の折り手の方々と協力して沢山の種類の作品の整理や分類を進めながら、「折り方の本」を出版したいと考えております。
大学のゼミにも元船員や現役船員の方を招いて、学生たちに折り方を教えてもらっています。若い世代にとって、「花毛布」は今までにない新鮮な体験で、皆目を輝かせて、時にはオリジナルの形を作りながら熱心に取り組んでいます。
また近いうちに「花毛布」をひとりでも多くの方に知って頂けるような機会がめぐってくることを願っております。
コメントありがとうございます。
デザインの専門教育を行う学校で授業をしているため、担当の学生にはこうした文化をぜひ吸収して欲しく、情報提供しております。
デザインを学ぶ学生には、意匠を施す行為自体がサービスであり、日頃より日本人ならではの感覚を大切にして欲しいと常に感じておりましたが、この「花毛布」は私にとっても衝撃的な出会いでした。
現在当校のグラフィックデザイン専攻の学生は「サービスのデザイン」をテーマに卒業制作に取り組んでおりますが、「花毛布」のような手元に残らないデザインに込められた「サービスの心」にも目を向けて欲しいと思っております。
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