ヨコトリレビューの続きです。
その1、その2で書いたように、映像作品が目立ったトリエンナーレでしたが、もちろん他のメディアの作品も多く、注目の作品がありました。
今回見ることのできた2会場は、展示空間としても極端に異なる会場なので、それぞれのいいところが作品と呼応して楽しめました。
そういう意味では、もっと横浜の街中へアートが侵食して行くとおもしろいと思うのですが、今回のコンセプトは違ったようですね。
さて作品レビューです。
まずは日本郵船海岸通倉庫(BankArt Studio NYK)会場ですが、天井が高く、部屋の構成も今回の展示空間のために作られた壁が多いため、作品とのマッチングがいいです。
ジルヴィナス・ケンピナス(Žilvinas KEMPINAS)
「5番目の壁」
(日本郵船海岸通倉庫/BankArt Studio NYK会場)
この作品は、展示されている部屋への入り口を狭くとっているため、中に入ると一瞬何もない空間に見え、室内へ歩を進めることで、張り巡らせされた磁気テープが現れるという作品。
改めて磁気テープの薄さを感じると同時に、入口からの視点では磁気テープの幅が見えない角度で張り巡らす計算されていて、目の前のアナログな空間と素材が衝撃を与える作品です。
この作家は、磁気テープという素材に魅せられているようで、世界のいろんな空間で磁気テープを使った作品を発表しているみたいですね。
空間に作品を置くだけでない、空間とのせめぎ合いが心地よい作品でした。
作品を紹介しているサイトを見ると拘り方はすごいものがあります。
静止画より動画でないと面白さがわからない作品がYouTubeにアップされていました。
これも面白いです。
デワール&ジッケル(DEWAR & GICQUEL)
「無題」
ヨコトリ紹介のメディアに登場しがちなカバの作品。
写真で見ていた時はあまりピンときていなかった作品ですが、実際に現物を見るとスゴイというか面白い作品でした。
この作品は20tの陶土を使って展示会場で現地制作されたものですが、水分を含む粘土なため、会期中に水分が抜け自然にひび割れや表面の質感変化が現れるという趣向なのだと思います。
完成した状態を維持することが一般的な芸術作品である中、時間と共に変化することがテーマの作品なのでしょう。
ヨコトリが8/6からですから2ヶ月以上経って、いい感じにひび割れと質感変化が起こっていました。
会期はじめはただの巨大カバだったことを考えると、ちょうど見頃なのかな?とも思います。
このあと自然風化まであるとなお良いのですが、あと半月でどう変化するでしょうか。
今回出品の作品はそのままの陶土でしたが、石彫作品も多い様ですね。
陶土の塊が割れたり、自然に割れた石などを組み合わせてできた塊などへの思いが強く作品制作に結びついているようです。
イェッペ・ハイン(Jeppe HEIN)
「スモーキング・ベンチ(Smoking Bench)」
8/31まで金沢21世紀美術館で大規模な個展が開催されていたデンマークの若手作家で、その作品は鑑賞者との関わりをテーマにした作品を多く制作している作家です。
今回のヨコトリの出品作は鏡の前に置かれたベンチに人が座ると霧が発生する作品(装置)。
自分が霧に包まれる様を鏡を通して見る事ができるという、ただそれだけのものですが、これが面白いから不思議です。
霧と言えば国立昭和記念公園のこどもの森にある「霧の森」を思い出しますが、安全が前提にある中で、視界を遮られる霧に包まれる感覚というのは、他にない緊張感とわくわく感があるものです。
山下 麻衣+小林 直人
「A Spoon Made From The Land」
砂の山の上には1本のスプーンが刺さっています。
作品制作の記録映像が映し出されているので、スプーンを鋳物で作ったのだなということはわかるのですが、一番のポイントはこの二人がブリキのバケツを持って砂浜に座り込み、何をしているのかということ。
映像がループされているので、タイミングによっては肝心なポイントを見逃してしまいます。
この2人の作家が砂浜でしていることは、磁石を使って砂鉄を採集していること。
この砂鉄採集の瞬間の映像がわくわくさせるので必見です。
採集場所は千葉県飯岡海岸だそうです。
(次は横浜美術館会場につづく)
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