写真と映像のジャンルで将来性のある作家を発掘することを目的に東京都写真美術館ではこれまでも新進作家展が開催されてきました。先日終了した「この世界とわたしのどこか」はその11回目。
その中でちょっと面白い作品がありました。
ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アート出身の写真家である大塚千野さんの〈ダブル・セルフ・ポートレイト〉。(フライヤーのメイン写真はその1枚)
どこにでもある大人の女性と女の子のスナップに見えるこの写真。作家の子どもの頃のスナップ写真と現在の作家のデジタル合成写真なのですが、その表現力がものすごい。
仕組まれた写真の中には確実に20数年経ったはずの2人の同一人物が、「会話し、時間を共有し、生活している一瞬を捉えた」ーように見えます。
はじめは親子等の普通のスナップ写真だと思っていたものが、20数年経った同一人物の写真だと知ると、普通は「ああ合成なのね」と冷めてしまうのですが、この写真ではタイムスリップが現実であるかのように錯覚させる力があります。
デジタルで再構成することが当たり前になっている現在の写真表現でこれほど感心させられたのは、この写真がものすごい技術がありながらも「技術」を感じさせないからなのだと思いました。
会場では2人の写るスナップ写真から1人ずつがフェードイン、フェードアウトする動画が上映されていました。ちょっとフェードする時間が長過ぎる気はしましたが、大人だけ、こどもだけのそれぞれで、風景は変わらないのに「時間(時代)」が変化して感じられるような不思議な感覚があり面白い体験でした。
ちょっと注目の新人写真家です。
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