トーマス・ルフはドイツの現代写真界の巨匠ですが、日本ではまだあまりメジャーではなく、大規模な回顧展は今回が初です。
80年代から現在までの様々なシリーズの写真表現作品が展示されているなか、なんといっても2mほどの大きさにプリントされた写真群が圧倒的。
展示されているほとんどの写真が何らかのデジタル処理によって得られた画像ですが、捉えた光の表現であるはずのこれまでの写真表現という枠を完全に超えながらも、制作過程や素材は確かに写真であるという不思議な感覚の得られる展覧会でした。
THOMAS RUFF 《photogram》/THOMAS RUFF《Houses》/THOMAS RUFF《cassini》(上段左より)
THOMAS RUFF《Portrait》/THOMAS RUFF《Substrat》(下段左より)
「トーマス・ルフ展」 東京国立近代美術館
近年、美術展のチラシではA3の2つ折りや、2〜3 種の図柄のバージョンを制作することが多くありますが、宣伝に力が入りすぎるあまり、肝心の展覧会では印象が薄れたり、イメージが裏切られることもしばしば。
観客動員には効果があるのでしょうが、鑑賞者の立場で考えるとあまり成功しているとは思えないものでした。
ところが「トーマス・ルフ展」の力の入ったセールスプロモーションでの、A2のサイズいっぱいに高精細で印刷された写真は、展覧会場の作品の大きさや作品の密度を十分に期待させ、その期待をまったく裏切ることのない展覧会という素晴らしいもの。
話題性だけで人集めをする展覧会が横行するなか、東京国立近代美術館の底力を感じた展覧会でした。
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